8つの視点を中心に大学の取組を調査
日本私立学校振興・共済事業団は2018年3月に、2017年度「私立大学・短期大学教育の現状」(2017年8月31日時点のデータを使用)を公表した。
私立大がどんな取組に力を入れているか、を調査したもの。受験生数の新たな減少期への突入によって、大学の氷河期が始まる。これを「2018年問題」と呼んでいるが、私立大は、サバイバル中だ。
同事業団では、大学の取組を、①カリキュラム・教育方法、②学びの支援、③学修についての評価、④学生生活支援、⑤進路・就職支援、⑥国際化、⑦連携、⑧特色ある施設等──これら8つのグループに分けている。また、大別すれば1)学習支援、2)生活支援、3)就職支援──の3つになる。
生活支援や就職支援の取組をチェック
保護者の方も、大学の知名度だけで受験大学を選択するのではなく、①~⑧についてチェックし、お子さんにアドバイスするようにしたい。ここでは、1)~3)の視点からポイントを紹介しておこう。
【学習支援】科目等履修制度、特色ある教育施設等の整備に取り組む大学が増えた。オープンキャンパスや各大学の案内などで、研究施設や学習サポートの充実度に目を配りたい。例えば、理系の大学の場合は実験・実習施設の充実度、文系学部の場合は図書館や自主学習スペースの利用のしやすさなど。
【生活支援】奨学金や寮の設備など、生活面でのサポートもチェックしたい。特に私立大の場合、成績優秀者を対象に「給付型」の奨学金を設けているところもある。今のところ、奨学金の利用を考えていないご家庭でも、調べておく価値はある。
最近は、学生の心身に配慮する大学が増えている。「取組実施率」の1位は心身ケア支援だった。また、お子さまが国際交流に興味がある場合は、国際学生寮があるかどうか、調べてみたい。
【就職支援】「取組実施率」の2位は就職支援。最近は就職率が好調のため、支援も緩みがち。保護者としては「就職」は必ずチェックしたい。
お子さまが、医療系や法学系などの職業など、資格が必要な仕事を志望している場合、資格試験の合格実績やバックアップ体制は確認しておきたい。また、キャリアセンターを設けて、入学した直後から就職まで、段階的な教育プログラムを提供する大学かどうかを確認する。
私大は学生への面倒見のよさを強調
私立大が取り組んでいるものとして、最も多く挙げられたのは「学生の心身に関する支援」で、次いで「就職支援」だった。心身の健康維持から就職まで、今どきの私立大の「面倒見のよさ」がうかがわれる。学生の心の問題や体の健康管理などに私立大が力を入れると同時に、学生の就職支援にも努力している。大学が生き残るためには、学生はもちろん、保護者や社会から信頼を得ることが大切だ。
順 | 取組の名称 | 学数 | 実施率 |
---|---|---|---|
1 | 学生の心身に関する支援 | 504校 | 89.8% |
2 | 就職支援 | 502校 | 89.5% |
3 | 学費負担の軽減 | 490校 | 87.3% |
4 | 地域連携 | 466校 | 83.1% |
5 | キャリア教育(進路選択) | 437校 | 77.9% |
6 | 科目等履修制度 | 424校 | 75.6% |
特色ある教育施設等整備 | 424校 | 75.6% | |
8 | 資格取得等(国家資格) | 422校 | 75.2% |
9 | 初年次教育 | 417校 | 74.3% |
10 | インターンシップ | 416校 | 74.2% |
11 | 学生アンケートの活用 | 415校 | 74.0% |
12 | ボランティア活動 | 410校 | 73.1% |
13 | 学生の自主活動 | 407校 | 72.5% |
14 | 中途退学防止 | 403校 | 71.8% |
15 | 生涯学習 | 395校 | 70.4% |
17年8月31日時点の教育データを集計。581大学が回答。