授業料減免と給付型奨学金の支給
「真に支援が必要な低所得者世帯の者に対し、社会で自立し、及び活躍することができる豊かな人間性を備えた創造的な人材を育成する」ことを目標とし、低所得世帯を対象に、大学や専門学校などの高等教育を無償化する「大学無償化法」が5月10日、成立した。
文科省のホームページによれば、①授業料等減免と②学資支給を合わせて措置する。
①授業料等減免制度の創設
1)学生に対して、大学等は、授業料及び入学金を減免する。
2)減免費用は、国または地方公共団体が負担する。
3)支援の対象となる大学等は、経営に問題がないこと。
②学資支給(給付型奨学金の支給)の拡充
1)学資支給は、独立行政法人日本学生支援機構が行う。
2)学資支給を不正に受けた学生への対応は徴収金の額の引き上げ。
世帯年収270万円は全額支援の対象
もう少し具体的に説明してみよう。
1. 対象は低所得世帯のみ
住民税の非課税世帯は全額、それ以上の世帯は収入に応じた割合で学費が支援される。以下は両親と大学生(本人)、中学生の4人世帯の場合。
・世帯年収270万円未満は全額支援
・270万~300万円未満はその3分の2
・300万~380万円未満はその3分の1
授業料等減免の上限額(年額)は、国公立大学の場合で入学金約28万円、授業料約54万円、私立大学の場合は、入学金約26万円、授業料約70万円。
これだけ減免されれば、かなり助かるはずだ。
2. 給付額は学校の種類で決まる
給付型奨学金の給付額(年額)は、国公立大学の場合で自宅生約35万円、自宅外生約80万円、私立大学の場合は、自宅生約46万円、自宅外生約91万円。
今回の措置によって約75万人が支援を受けられる見通しであり、年間7600億円の支出が見込まれている。財源については消費税の10%への引き上げ分の一部が充当される予定になっている。
退学・停学・留年等は支援打ち切り
結構、シビアにチェックされることになる。国民の税金が投入されるのだから、いい加減なことは許さないという姿勢だ。
次のケースで支援は打ち切りとなる。
1)退学・停学の処分を受けた場合
2)修業年限で卒業できないことが確定した場合(留年)
3)修得単位数が標準の5割以下の場合
4)出席率が5割以下など、学習意欲が著しく低いと大学等が判断した場合
また、成績も厳しくチェック。低い成績だと警告。さらに警告が続けばレッドカードで支援は打ち切りとなる。
1)修得単位数が標準の6割以下の場合
2)平均成績(GPA)などが下位4分の1の場合 3)出席率8割以下など学習意欲が低いと大学等が判断した場合
また、高校卒業後2年までが対象。そのほか、日本国籍、法定特別永住者、永住者または永住の意思が認められる定住者であることや、過去に無償化支援を受けたことがないこと、保有する資産が一定の水準を超えていないことも条件とされている。
評定平均値3.5未満でも門戸を開く
では、どれくらいの成績を取っている高校生が対象になるのか。文科省は、高校に示した手引書の中で、次のように示している。
「支援を希望する生徒の申請時までの評定平均値が3.5以上である場合、高校等における当該生徒の日常的な学習状況等を踏まえ、支援対象者の候補者として推薦することができます」
評定平均値が3.5以上ならば、対象者になり得るという訳だ。3.5未満である場合、進学後、しっかりと学修することが求められることを十分に踏まえ、明確な進路意識と強い学びの意欲を確認し、そのレポートや面談等の記録を残す必要がある、としている。努力する生徒には、門戸を開いているということだろう。
参考)
文部科学省 http://www.mext.go.jp/kyufu/
独立行政法人 日本学生支援機構 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/kyufu/index.html