「センター試験」の易化が特徴の1つ
国公立大学に進学するには、ご存知のように「センター試験」の受験が必須。では、2019年度入試での「センター試験」の結果はどうだったのか。
19年度センター試験の大きな特徴の1つは、対前年で平均点がアップしたこと。各科目によってアップ・ダウンはあったが、国語(+16.87点)と英語[リスニング](+8.75点)が大幅に上昇したため、全体を押し上げた格好だ。
このセンター試験の対前年平均点がアップしたことによって、19年度入試にどのような影響を与えたか、探ってみよう。
学部系統別の倍率1位は薬・看護
受験生は、センター試験の結果を踏まえて、合否を予想しながら、志望大学に出願した。文科省が公表した「平成31年度国公立大学入学者選抜確定志願状況」(2019年2月20日)によれば、今春の国公立大学2次試験の確定志願者数が昨年より4128人増え、46万9836人だった。
募集人員に対する全体の倍率は4.7倍。その内訳は、国立大学(82大学393学部)の志願者は33万153人で倍率は4.2倍、公立大学(88大学198学部)は13万9683人で6.3倍だった。
国立大学前期日程は募集人員6万4031人に対し、志願者数が19万4525人で、志願倍率が3.0倍。国立大学後期日程は募集人員1万4335人に対し、志願者数が13万5628人で、志願倍率が9.5倍。国公立大学前期・後期・中期日程の合計は募集人員10万426人に対し、志願者数が46万9836人で、志願倍率が4.7倍と前年度の確定志願倍率と比べて0.1ポイント増加した。
また、志願倍率を学部系統別にみると、「人文・社会」5.1倍、「理工」4.4倍、「農・水産」4.1倍、「医・歯」5.0倍、「薬・看護」5.4倍、「教員養成」3.9倍、「その他」5.2倍で、「薬・看護」が最も高かった。
学部系統 | 区分 | 2019年度 | 前年比 (%) |
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募集人員 | 志願者 | 倍率 | |||
人文・社会 | 国立 | 18,751 | 81,198 | 4.3 | 101.9 |
公立 | 8,681 | 58,441 | 6.7 | 106.6 | |
計 | 27,432 | 139,639 | 5.1 | 103.8 | |
理工 | 国立 | 31,905 | 127,215 | 4.0 | 98.3 |
公立 | 4,084 | 30,143 | 7.4 | 107.2 | |
計 | 35,989 | 157,358 | 4.4 | 99.9 | |
農・水産 | 国立 | 5,572 | 21,957 | 3.9 | 103.7 |
公立 | 931 | 4,943 | 5.3 | 93.2 | |
計 | 6,503 | 26,900 | 4.1 | 101.6 | |
医・歯 | 国立 | 7,250 | 36,591 | 5.0 | 99.6 |
公立 | 949 | 4,717 | 5.0 | 95.4 | |
計 | 8,199 | 41,308 | 5.0 | 99.1 | |
薬・看護 | 国立 | 1,074 | 4,691 | 4.4 | 93.4 |
公立 | 3,775 | 21,300 | 5.6 | 102.8 | |
計 | 4,849 | 25,991 | 5.4 | 101.0 | |
教員養成 | 国立 | 9,829 | 38,687 | 3.9 | 100.9 |
その他 | 国立 | 3,985 | 19,814 | 5.0 | 100.0 |
公立 | 3,640 | 20,139 | 5.5 | 93.2 | |
計 | 7,625 | 39,953 | 5.2 | 96.5 | |
合計 | 国立 | 78,366 | 330,153 | 4.2 | 100.0 |
公立 | 22,060 | 139,683 | 6.3 | 103.1 | |
計 | 100,426 | 469,836 | 4.7 | 100.9 |
大規模私立大学の難化で国公立大学へ
文科省の「定員厳格化」の方針によって、18年度入試では都市圏の大規模私立大学が、軒並み難化した。また、2021年1月から導入される「大学入学共通テスト」(以下、共通テスト)を避け、センター試験で合格したいという受験生の心理状態によって、19年度入試では「安全志向」が予想されていたが、その通りの結果になった。
それは、公立大学の志願状況を見るとわかる。中堅クラスと見られる、公立大学の志願者が増加したのだ。前期日程6万4010人(前年6万2607人で1403人増)、後期日程4万3986人(同4万3292人で694人増)、中期日程3万1687人(同2万9604人で2083人増)、合計で対前年4180人も増えた。
また、国立大学でも、茨城大学、静岡大学、滋賀大学、大分大学などでは大幅に増加。これは、明らかに「安全志向」の流れと見られる。センター試験の易化による強気の出願の中にも、「今年の入試で合格を決めたい」という、受験生の強い意識があった。
「二段階選抜」は40大学が実施した
19年度入試でも、大学入試センター試験の成績で絞込みを行う「二段階選抜」は実施された。前期日程で28大学48学部が実施し3660人、後期日程は25大学32学部で3743人が不合格となった。
例えば、京都大学は2月13日、大学入試センター試験による二段階選抜の合格者を発表した。志願者7511人のうち85人(無資格者を含む)が2次試験を受けられず、不合格となった。また、総合人間学部の文系、教育学部の文系と理系が予告倍率通りに実施。経済学部の理系は予告倍率を緩和して行った。理学部と医学部医学科はセンター試験の合計点を基準に決定した。
入試では①「隔年現象」(前年の反動)、②「学部・学科の新増設・廃止」、③「募集人員の変更」、④「入試科目の変更、科目数の増減」などの影響による、志願者の増減が見られた大学もあった。例えば、富山県立大学・看護や福島大学・農学群など。
19年度入試は「文理イーブン型」だった
かつては受験生の多くが、先輩の就職状況を踏まえて、文理の方向を決め、学部選択をしていた傾向があった。しかし、昨今ではこの大雑把な括りが、通用しなくなってきているフシがある。IT社会の到来などが、流れを変えているようだ。
大学生の就職状況を見ると、最近の景気回復の傾向を受けて、企業などのニーズが多い人文社会系学部が学生の人気を集めている。しかし、大学入試では「文高理低」と、一概に言えない状況になっているのだ。19年度入試は「文理イーブン型」だった。
かつて、不況時は「理高文低」という状況もあったが、現在は社会のニーズによって、文理の分野が細分化されつつある。それに、文科省の大学改革も影響を与えている。
「文高」の中でも、従来型の文学部・教育学部などの進学希望者は、文科省の方針で新しく誕生した文理融合型学部や地域振興型学部などへ移行しつつある。また、「理低」の中でも、社会の需要にマッチした分野は人気が高く、志願者を集めている。
「公立大学中期日程」が新たな併願先
最近のキーワードは、文系が「グローバル」「国際」、理系が「情報通信」だが、これらの学部などを有する大学は、人気が高く志願者が多かった。東京外国語大学(国際社会・国際日本)や国際教養大学、長野県立大学(グローバルマネジメント)など。また、理系では東京工業大学(情報理工学院)、電気通信大学(情報理工)、会津大学(コンピュータ理工)など。
また、19年度入試では、「公立大学中期の拡大」が特徴の1つだった。国公立大学は推薦・AO入試募集枠拡大のため、後期の募集人員を減少させた。それを補うために、「公立大学中期」が併願先となった。
19年度入試では、18年度開設の公立小松大学、私立から公立に移行した公立諏訪東京理科大学、学部改組した兵庫県立大学(社会情報科学)、新見公立大学(健康科学)で中期を新規実施し、多くの志願者を集めた。
「推薦入試」→「AO入試」へシフト替え
国公立大学には「推薦入試」から「AO入試」にシフト替えをする動きがあるようだ。19年度「推薦・AO入試」では、その傾向が見られた。
推薦入試の志願者数は群馬大学や岡山大学、長崎大学などで増加、新潟大学、富山大学、香川大学などで減少した。国公立大学では1つの高校から出願できる人数に制限がある。また、合格したら入学が確約できる「専願者のみ」が出願できるケースが多い。そして、センター試験を課すタイプが増加している。
AO入試は、入試改革のポイントである「学力の3要素」のうち「思考力・判断力・表現力」がチェックしやすいこともあり、増加傾向にある。秋田大学、香川大学、北九州市立大学などでは募集枠を拡大した。
「センター試験免除」と「センター試験を課す」に分かれ、「出願→1次選考→センター試験→2次選考→合格発表」のプロセスが多い。